300のお題シリーズ

お題『 The World 』

世界中が君を瞞しているんだよ? そうじゃないって証明できる?

 

とある人物が、とある場所から、景色を眺めていた。いや、そこには景色なんて綺麗に飾られた言葉のイメージとは真逆の、あるいみで破滅をイメージさせるような光景があった。

見渡す限り、ヒトの生命は疎か動植物の生命すら見当たらない、完全なる静寂の中その人間は立っている。空はその光景とは裏腹に晴れ晴れとしてはいるが、空には鳥らしき鳴き声も無い。

男は、まだ若かった。おそらく、20代の前半か、間違えば10代の後半くらい。髪の毛は純白で、長いそれらをそのまま垂らしている。身体には黒いコートと、そして長剣が携えてった。

その男は、王だった。

王、それはこの世の全てを治めた者のみに贈られる称号にして、最強の証明。全ての生きとし生ける物の頂点に君臨するものであり、世界の食物連鎖の頂上。

男は、世界を治めた。彼の治めた今の世界は、完璧だった。争う者もいない、憎みあう者もいない。人を殺す人間もいなければ、人を瞞す人間もいない。

綺麗な―世界。完璧な―世界。綺麗な―世界。

男が理想とした――完全なる世界。

そんな中で、男はただ立っていた。男はこの世の中で、最も醜い人間に成り下がってしまった事を悲しんでいるわけでもない。完全な世界の中、唯一原罪を抱えている人間であり、人を殺した人間である彼はそんなことでは悲しまない。

男にあるのは、只の希望だった。そう、それは、王であるからの希望。王であるための望み。

『誰かが、自分を止めてくれるはず』という、希望。

世界はこのまま荒廃するだろう。男の完璧な理想によって、これ以上の破壊を持って、今までの全ての結果として、滅びるだろう。それは、已に決まったことだった。

男は、振り返る。

だから、男は願った。自分を止めてくれるものの存在を。

世界を救うために、世界を滅ぼさなくてはならない矛盾。そんな矛盾を抱えつつも、人間と言う醜い生き物を内包する醜い星を、男は許せなかった。

人間こそ、悪なり。それが、男にある唯一の感情。今まで裏切られ、苦しみ、瞞され、叩かれ、傷つけられ、刳(えぐ)られ、削がれ、曲げられ、歪められ、狂わされ、そして最後は殺されかけた男の唯一の感情だった。

男は、目の前の光景から目を離す。これ以上、ここに停まる理由も無い。男はおそらくずっと生き続けるだろう。男の唯一の理想と、希望と、感情がある限り。彼は生き続けなくてはならない。王として。

それは、王としての義務だったし、彼が望んでいることでもあったのだから。

過ちは、多数。間違いは、無数。

しかし、男は止まらないだろう。止まれないだろう。

死ぬまで、男は理想を貫くだろう。貫かなければならないだろう。

それは、誰よりも己自身のために。他のどんな人間のためでもなく、自己のために。己が理想ゆえに。

だから、男は、

 

「………お前を、殺す」

 

目の前の少年を、自分を殺してくれるはずの少年を、自分が願ったはずの希望を、怨むのだった。
世界観はファンタジー。舞台はFF。てか、王はセフィロスですね! 少年はクラウド、っと♪