(自称)超美少女天才探偵が起す事件の事件簿?―解決編―

 

 




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File−01<<<脱出>>>

 

 

 

 

 



彼女がまず最初に歩き出したのは例の穀物倉庫だった。

その袋を行き成り開けて、中身を調べ始める。

「な、なにやってるの!お、怒られちゃうよ!」

僕が条件反射のようにその行動に対して言うと、

「じゃあ、巽は死ぬより怒られるほうが嫌なの?いいじゃない、後から謝れば」

彼女の楽観的なその考えにには感動するが、あまり賛成は出来ない。

・・・とも言ってられない自体が目の前にはあったのだが。

「で、そんな粉、どーするのさ・・・」

僕が彼女が『これ!』と言って掴みだした白い粉を見て、僕は呆れて声をかける。

「巽!文句ばっかり言う前に動く!さぁ、電子ロックの扉ってどこ?」

「あ・・・うん。向こう」

と、僕は電子ロックの扉があるであろう扉を指差す。

彼女はそれを見るなりそっちの方向へと歩いていってしまう。

そして、やがで電子ロックの扉の前に立つ。

そこで彼女はその粉を上からサラサラと落としながらふっと息を吹きかけると・・・・・・・

電子ロックに10個あるナンバーのうち2つだけに指紋のように汚れがくっきりと残った。

3と・・・9。

9の方が多少汚れが酷いため、おそらく二回押すのだろう。

「あ・・・成るほど・・・そういうことか・・・」

「ふふ、判ったでしょ?澱粉(デンプン)ってあの殺害現場とかで指紋取るのにも使われてるって訳よ」

確かにこうして三つのナンバーさえわかれば後は押すだけだ。

「えっと・・・番号は399か、993、939なんだけど・・・巽、どっちだかわかる?」

「え・・・ええ?僕??」

僕は驚いた。

今まで彼女が人の意見を聞くなんて考えられなかったためだ。

「9の方が多少汚れが酷いってことは・・・えっと・・・939・・・かな?」

「ふふ、流石私の弟子!正解よ」

と言って彼女は番号を押す。

9・・・3・・・9・・・

ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・と電子音があたりの暗闇に響き、やがて・・・

ガシャン

と、電子ロックの扉が重々しく開かれたのだった。

「さ、巽!行くわよ・・・絶対逃がさないんだから!!」

彼女は意気込んで外へ飛び出しておこうとして、くるっと僕の方を振り替える。

それで、満面の笑みで笑う。

僕は一瞬ドキッとした。こんな笑い方も出来るんだ・・・と、そう思った。

素直に綺麗だな・・・とも。

「巽、今回は流石に巽に救われたわ・・・ありがとね」

「え・・・」

僕は驚いた。

素直に彼女から礼を言われたことが今まであっただろうか?

いや、無い。一回も。

そんな状況だったから、僕は嬉しくなって何も言えなかった。

「じゃ、私は一足先に戻るから・・・ちゃんと戻ってくるのよ?」

と、彼女は走り出した。

僕の胸は、未だに早鐘のように鳴り響いていた。

今なら、この人を好きになれそうな気がした。

 

「ほらぁ〜、巽ぃ!遅い!!」

次の日の朝・・・僕らはいつもの通り駐車場に集合していた。

男と女が夜遅くに帰ってきたとかで職員の中ではかなり問題になっていたようだが、

その対象が”千鶴子”だと判るや否や、職員も茶を濁したのだった。

生徒達も”巽も大変だな・・・夜までもアイツの世話か・・・”と慰めてくれただけでなんとも言わなかったし。

どうやらみんなの間では”いつもの身勝手自分行動”だと思っているらしいのだ。

そんな中、巽はいつもの荷物もちをさせられていた・・・。

「うう・・・昨日の事は、嘘だったのか・・・」

と嘆いていると、そんな巽に千鶴子は怪訝そうな顔をして、

「巽・・・あんた・・・もしかして・・・」

ずいっと目の前に迫ってきた千鶴子は真面目な顔で、

「私に変なコトしたのねぇぇっ!」

強烈な左アッパーが炸裂する。

―前言撤回、僕は彼女を二度と好きになれそうに無いです・・・(涙

 

その日の警視庁・・・

「あ、向井警視。どうかしたのですか?」

黒い服を着たキツイ感じの女性が声をかける。

目線の先には、一人の上司らしき男。

二枚目の男で、そのままファッション紙のモデルにでもなれるのでは?と思うほどに整った容姿。

キリッとした眼に、良く響く綺麗な声・・・

この甘いマスクにいままで何人の女が涙を見たか・・・ということを物語っていた。

東京警察の、そのとある一室・・・

「ん・・・ああ、南君か・・・」

男は女性を見るとそういい、再び新聞の紙面に顔を落とす。

「いや・・・また、先を越されたな・・・と思ってね・・・」

男は机に座ったまま、コーヒーを片手に新聞を広げたままそういった。

「ああ、彼女のことですか?ええ、お手柄ですよ?犯人達の逃走ルートまできっぱりと当てちゃって・・・我々としてもずっと手を焼いていた麻薬密輸人が見つかったおかげで一気にルートを芋づる式につぶせましたし・・・」

そこまで彼女が言ったところで男、向井と言われた男は手をかざして制した。

「いや・・・そっちじゃないんだ・・・」

と、真面目な声をしていった。

「はぁ・・・では、何なんですか・・・」

南がキョトンとした顔で答えると向井は本気と言った顔で南の手を握り、

「結婚しよう!」

と、言った。

「はぁ?」

南が明らかに怪訝な顔をして目の前の男を見る。

「いやな・・・刑事課の杉浦!知ってるだろう・・・あいつにまた先を越されたのだ・・・」

「結婚・・・ですか?」

南が明らかに軽蔑したように半眼で目の前の男を見つめているが、男は止まらない。

南の手を握りそれを自分の胸に当てる。

「そぉぉだ!ったく・・・刑事課の中では僕らだけじゃないか!結婚してないのは!!な、そういうことで南君・・・」

「お断りしますよ、警視」

そういうと南はぱっと組み手をいとも簡単に解く。

そのまま、部屋から出て行ってしまう。

「それよりもその事件には貴方の弟さんも関わっていたそうで・・・」

「ん?ああ、恭一か?」

今度は男はいっきに”どーでもいい”っていう感じで答える。

「あいつなら大丈夫だよ。なんせ、俺の弟だからな」

そう、自信満々に言ってのける。

だが、それも事実だった。

南は目の前に座っている自分の上司―向井 直人を見据えた。

こんな場所に居なければ、どこかの町にでも出ていて遊んでいる年頃だろう。

確か年は20歳と記憶している。その年齢で警視まで上り詰めた彼はまさに天才だった。

「なぁ南君!結婚してくれ〜・・・」

「お断りしますよ、警視」

南はそんな男を冷たく撥ね付けた。


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