はじまり
はじまり
楽しき日々は、何者にも変えがたい。
永遠に続いていくと願っていた、平穏という日常。
誰一人として、いなくなることは無い。何一つとして、変わることはない。
平行線の世界。しかし、それは幸せの世界。
でも、世界ってのは崩れやすく、そしてそれはあまりにも簡単で陳腐で。
気づいたら、あのときを回想するだけで。
僕らは、何かをなくしてしまったんだと思う。
もう、あのころの日々には戻れない。
あのころは何もわからなくで、でも後から思ってみると必ず存在する、大切なもの。
大切な何か。
それを、なくしてしまったんだと思う。
平穏と日常と、平静と幸福に守られて、それらが如何に脆いものなのかを知ってしまったから。
でも、僕らは結局この世界を生きているちっぽけな人間なわけで。
あのころは、ちゃんと考えて行動していたのだと思うけど。
後悔は、残る。
二度と戻らないその日を思い、感慨の中の自分に胸を焦がす。
―――これは、そんな僕らが体験したひと夏の物語。
桜舞い散る丘の上から始まった、ひとつの物語―――。