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+    第零話『 From × The Prince of Oblivion Continue 』    +


『な、なんでですかぁぁ〜〜、それに、どういうことですかぁぁ〜〜艦長!!』

 



昨日、あの廊下でのハーリー君の態度が、まだ気になっていた。

私、ホシノ=ルリは先ほどから目を瞑り、眠ろうとしているのだが……。

なかなか、眠気が訪れてきてくれなかった。

そういうときは、何故か取りとめもなく嫌なことが思い出されてしまう。

『お、おい!ハーリー!落ち着け!』

三郎太さんが、必死にハーリー君を止めるが、ハーリー君は抑えられながらも、必死にこちらへ向かってこようとする。

こんなに必死なハーリー君を見るのは、ひさしぶりだった。

『どうしてですか! 艦長………っ!!』

今度は、その反動か、ぐっと下を向いて押し黙ってしまう。

『もう、私は艦長ではありません、先ほどミスマル総帥に話を通してきました、私は…もう、貴方の上司でもなんでもないんです』

そう、継げた。

ミスマル提督は、先の氾濫のときの活躍が認められ、地球連合宇宙軍の総帥に就任した。

つまり、一番偉い人なのだ。

『艦長は……貴方に、任せます、マキビ=ハリ少佐。補佐をよろしくお願いします、高杉 三郎太大尉』

私は、静かに言う。

『あの船は、私たちでしか運転できませんから…』

『はっ! お任せを…………って、艦長、そりゃあいくらなんでも突然すぎませんか?』

この決定に三郎太も不服の様子だった。

『そんなぁ……う、うわぁぁ〜〜ん!!』

ついに、ハーリー君は泣き出してしまう。

『……ゴメンナサイ、でもこれ以上、私の私的な理由に、貴方たちを巻き込みたくないんです』

真実をありのままに話す。

私は木蓮戦争が終わってから、あの人を探すためだけに地球連合に入り、艦長に就任した。

これは先の戦争のときの私の功績が功を奏し、何の障害もなくなることができた。

その間、私はずっと、あの人を追っていたのだ。

『……例のあの人………ですか…艦長』

珍しく泣いても留まっていたハーリー君が、そう、消えそうな声で言う。

『………』

その質問に私は何も答えられない。

ハーリー君の気持ちは、知っているから。

『艦長、じゃあ、艦長は……』

三郎太が言いかける。

私はその言わんとしていることを悟り、先に言った。

『はい、私は、ネルガル所属、試験艦ナデシコCに、乗ります。アノ人を、探すために』

それから私は、その場を逃げるように後にした。

 

―私は、ハーリー君を傷つけてしまった……―

すっと、目を開ける。

と、いつの間にか寝ていたらしい。

私はその場に身を、起こす。

時間はすっかり朝だった。

何の夢だったのか……まだ朧気としているが、覚えている。

いつもの、後悔にとらわれた、夢。

そのままシャワールームに入り、寝汗を流し、備え付けの服を着る。

慣れ親しんだ……ナデシコの正装。

「準備は……できたのか?」

いつの間にいたのか、入り口からゴート=ホーリーさんが声をかける。

ゴートさんはとても体の大きい、これもまたネルガルのシークレットサービスの人だ。

そして、同じく戦友。

無口で、そして恐ろしく強い………。

「はい、ゴートさん。早速、行きましょう」

私はあらかじめ纏めて置いた荷物を片手に、部屋を後にした。

あれから、丸々三日が、経過していた。



 

『おお〜久しぶりだな、ルリちゃん!』

と、ナデシコが保管してある倉庫に来た途端、声をかけてきたのは、他でもないスバル リョウコさんだった。

「リョウコさん? あの……軍は……」

「へへ、実はよー、この前ナデシコに乗艦して、一緒に戦っただろ? アレが原因で首になっちまってさぁ」

「だとしても、あれは1年以上前………」

アハハハと、豪快に笑うリョウコさん。

……笑い事じゃあ、ないと思うんですけど。

「そんなときにこの、ナデシコの話が来ただろ? あぁ、これは丁度いい〜ってなワケでな」

裏で、ミスマル総帥が働いてくれたようですね。

「ミスマル総帥に、感謝ですね」

私はそういった。

「ああ、そうだな」

ニコっと笑って答えるリョウコさん。

私はその笑顔が、一瞬とても美しく思えた………。

リョウコさん、何か、可愛くなってませんか…?



 

「……艦長……っ!」

と、今度はその後ろから声が掛けられる。

「………ハーリー…君?」

私はここに居るはずのない声にびっくりしながら、こたえる。

「へへ、コイツが、どーしても見送りにってんでね♪」

「よ、余計なことは言わないでいいんです!!」

ウィンクする三郎太さんに、其れを恥ずかしがるように打ち消すハーリー君。

それは、いつもどおりで。とても、自然で。

「艦長、ボク、がんばります! 艦長のように出来るかわかりませんが……でも、一生懸命がんばっていずれ……ぼ、ボクも……」

ハーリー君が頑張ってそこまで言おうとした次の瞬間、

『ああぁぁ〜〜リョウコ〜〜』

……その声は、大きな声にかき消された。

私はつい、目線をそちらに向けてしまう。

「ん? ああ、ヒカル!それに…イズミィ! あんたら………来てくれたのかい??!」

その姿は過去、一緒に戦った戦士、2人の姿だった。

『ううぅ、ボクって………ボクって…………』

『…ま、気を落とすな、ハーリー』

視界の隅で、ハーリー君が涙ぐんでいたのは無視するとして。

「行ってらっしゃい〜、へいらっしゃいは〜お寿司屋〜〜」

……………相変わらず意味不明です、イズミさん。

それに、その意味不明な、ピエロのような格好は……一体?

ポロンと、鳴らすウクレレ。

悲しすぎます、イズミさん。でも、とてもそれは懐かしい光景。

「へへ、ごめんね〜私、連載あってさぁ〜〜」

ヒカルと呼ばれた眼鏡の女の子が、リョウコの腕を取り、涙する。

「仕方ねーさ。ま、お前らが居ないのは寂しいけど……オレも其れを挽回するくらい、頑張ってくるからよ!」

ヘヘと笑って、答えるリョウコ。

「うん! 頑張ってきてね!!」

その笑顔に、さらに笑顔で答えるヒカル。

この人たちは、知っている。

これが……今生の別れになるかもしれないってことも。

戦争の厳しさ、そして、現実の過酷さ知っているから、ここまで笑えるのだろう、精一杯。

「おや、皆さん、おそろいですか?」

皆がそろったタイミングを見計ってプロスさんが出てくる。

その横には、ゴートさんも一緒だ。

「おはようございます、プロスさん………」

私はぺこりと挨拶をする。

「はい、おはようございます」

その挨拶に律儀に答えるプロスさん。

「さて、今回……多少人材不足…ということで、ネルガルのほうで人材をそろえさせていただきました」

にこっと笑って言うプロスさん。

私が首をかしげると、船内のドッグにこつこつこつ…と、二つ、足音がこだまする。

その場に居た全員が、そちらの方へと視線を向けた。

「……久しいな、ナデシコパイロット諸君。と、言っても、ルリ君とはこの前会ったがね」

と、あさっての方向から声がする。

その姿は…………。

「つ、月臣 元一郎っっ!!!」

リョウコさんが、どこかへ飛んでいってしまうのではないかと思うリアクションで驚く。

端正な顔立ちに、きりっとしまった眉に、眼。

長く、綺麗な黒髪に長身の身長。

月臣 元一郎その人だった。

「な、なんでお前が……………!?」

リョウコさんが疑問の声を発するが早いか、またまた声がする。

『説明しましょう!』

……この声は。

妙に大人っぽい声、長い金色の髪………。

そして、完全なるプロポーション。

説明好きな、女船医。

そう、アイちゃんこと、イネス=フレサンジュである。

今も、何故か白衣姿での登場である。

「月臣さんは、過去、木蓮に所属していた兵士です。しかし、木蓮戦争が和平によって終結したとき、木蓮は解体、地球の連合軍と合併し、地球連合宇宙軍ができました。ただ、月臣さんはその軍には入らず、密かにネルガルのシークレットサービスに所属していたのです。これも裏でネルガルの企業隠蔽工作が地球連合軍との激しい激戦区にあったので、過去、ナデシコAの機密情報を保持するために多額の資金を投資して―――っっ!!!」

「相変わらず、説明すきなんですね、イネスさん」

そこまで一気にまくし立てた女の人―イネスさんい大して、私は声をかける。

「あら、お久しぶりね、ルリちゃん。また一緒になれて嬉しいわ」

イネスさんもニコっと笑いかける。

私はその完成された笑みを見て少し何故か、照れてしまい、目線をはずす。

美人の人は、苦手です。

そして、その目線の先に一人の女の人が、移る。

「あの…その女の方は…………?」

私が不思議そうにたずねると、その質問には月詠さんが答えてくださいました。

「あ、そうだね。君たちは会うのは初めてか? これは月臣 楓。私の、実の妹だ」

………………。

………聞いてませんよ、月詠さん。こんな……綺麗な妹さんがいるなんて。

月詠さん同様、長い黒髪。そして、今度は優しい女性的な眼。

優雅に微笑みを浮かべているあたり、美人であるといえる部分である。

「始めまして……わたくしは月臣 楓。皆さん、カエデと、呼んでくださって結構なんで、よろしくお願いします」

優雅に、一礼。

その完成された動作に、私たちは何も言えなかった。

「カエデは、木蓮軍の草壁直属のエステバリス隊、『華月』のリーダーだったんだが、知らないのも無理はない」

草壁……その言葉を聴いて、私は少しだけ、体が強張るのを感じた。それはリョウコさんも一緒だったらしく、暗い顔で俯いていた。

当然だろう、リョウコさんはアノ事件のとき、直接アキトさんと戦ったのだから。

「しかし、エステバリスの腕前は、私が保証する……何といっても…カエデは、テンカワ君のエステバリスの師なんだからな」

「て、テンカワの!?」

その言葉に驚いたのは、別にリョウコさんだけじゃあなかった。

「はい、アキトさんに………エステバリスを教えたのは…私です。そして、兄は……木蓮式柔術『柔』を。ゴートさんは銃などの扱い方を、教えました」

しっかりと、そう言う。

しかし、その言葉の裏に何故か、暗い影が見えた。

(後悔の……影………?)

それはそうかもしれない。

なんといっても、あれからアキトさんは、手当たりしだい”火星の後継者”関係コロニーを破壊して周り、そして、何千という人を、殺したのだから。

人殺しに加担したも同じなのだから。

「と、いうわけだ。みんな、戦力としては不足あるまい?」

それはそうでしょう。この中でアキトさんと同等の力を持っている人なんて……居ないんですから。

「と、紹介もすんだところで……早速………」

と、プロスさんがナデシコに私たちを案内しようとした次の瞬間、

『あぁ〜皆! ひさしぶり!!』

能天気な声が、聞こえた。

それは、この場に聞こえるはずのない、声。

過去のナデシコの中で、なくてはならない声。

そして、私が最も待ち焦がれていた、声。

『あぁもう! ユリカ!! 荷物くらい自分で……………あ! ユリカ!??』

…私を引き取ってくれると言った、一人。

あの人、アキトさんが愛した唯一の女性。

そして私の唯一の………

「ユリカさん………………………………もう、体はいいんですか?」

その胸に飛び込みたい衝動を必死に抑え、私は言った。

「うん! イネスさんのお墨付き♪」

「そうですか…」

私は下を向いてしまった。せっかくの……再会だというのに。

笑顔の、再会にしたいのに。

満面の笑みで、迎えるはずだったのに。

強く、なったはずだったのに。

強く、なりたかった。

でも………どうしても、涙が。

「………ごめんね、ルリちゃん」

いつも通りの優しい声で言う、ユリカさん。

「すみません、抱いてもらって、いいですか?」

「……うん、勿論だよ」

そのまま、ユリカさんの暖かい腕が私を包みます。

それから、私は少し、泣きました。

しばらくの間、無言がドックを支配する中、私の洩れる嗚咽の声だけが、聞こえていた。

本当に、本当に、よかった………。



 

しばらくして。

「はぁ、ジュン君も……お疲れね」

その更に後ろから、声がする。

「まったくですよ、ミナトさん……」

はぁと、ため息をつくジュン。

一応ジュンさんも地球連合宇宙軍の中佐さんだったような気がするんですが……。

相変わらず、しりに敷かれているんですね、ユリカさんの。

「ミナト……さん?」

私は話が目を疑った。

そんな…………………くるはずが無いと思っていたのに。

ナデシコは、辛い場所だから。だから…………。

だから……………。

「あれ〜ルリルリ? 私が、もしかして来ないと、思った??」

笑顔で聞く。

「………………………ありがとうございます」

私は、そうとだけ、言った。

「頑張って探そうね、アキト君」

「…はい」「うん…っ!」

微笑むミナトさん。それに答えたのは、私とユリカさんでした。



 

「え?いいの? 艦長……ルリちゃんじゃなくて?」

そういったのは、私が最初だった。

『艦長には、ユリカさんが、相応しいです』と。

「はい、いいです。それに、アキトさんも、……………やはりユリカさんに助けてもらったほうが、いいと思いますし」

本当は、私が助けたいんですけど。

いや、助けるという言い方は、本当は変なんですけどね。

それでも、アキトさんが愛しているのは、きっと………………

うーん、と一瞬考えてから、

「うん! わかった!! ルリちゃんは……補佐、よろしくね!」

とびっきりの笑顔で答えたのだった。

そんな感じで、鉄骨ばかりの倉庫から、試験艦ナデシコCの内部に入ろうとしたその時。

『おお〜元気だったか、野郎ども!!』

『おー!!』

ナデシコの倉庫から、声が響いてきた。

この声は、ウリバタケさん?

「ん? おお、パイロットにエステのパイロットさんがお出ましだな」

そう、やはりウリバタケさんでした。

そのまま、こちらへ歩いてきて、私のところまで来ると、

「ホシノ=ルリ艦長。これからは俺たちがびっしりと整備するからよ。安心していいぜ〜」

「あの、ウリバタケさん、艦長は……あっちです」

と、私はなにやら勘違いしているウリバタケさんに教えてあげるため、横の人を指差した。

「ん? ああぁっ!? お前は…………み、ミスマル ユリカ!! 生きてやがったのかぁ!!」

「へへ、ご心配をおかけしました。アキトも無事ですよ」

もっとも、アキトさんは、行方不明ですけど…………。

回りの皆さんも、すこし苦笑する。

「ってこたぁ………くぅ! 燃えてきたぁぁぁ! よろしく頼むぜ、ミスマル艦長よ!!」

「はい、よろしくお願いします!!」

意味が分からない会話が成立し、お互い、何かを感じあったようだった。

そのまま、私たちは船内へと、入る。

まったく、馬鹿ばっかり、ですね。大好きですけど。



 

ヒカルさんたちの見送りを受け、私たちは船内へと入っていった。

船内は、前のナデシコとは少し違う様子だったが、基本的な構造は変わっておらず、迷うことなくコックピットまでたどり着くことが出来た。

そして………コンピューターを起動。

『お帰り、ルリ♪』

巨大スクリーンに花を飾った模様で、そう、表示される。

「ただいま、重鐘…………」

私は、少し微笑んでそういった。

 

それから時間を少し空き、船内の最終チェックが行なわれている。

私はオモイカネのメインプログラムの後進と、館内の情報制御の最終確認。

「艦長、整備班から通達。最終チェック、終了。同時にオモイカネシステム異常見られず………多少のブラックボックスはありますが、その外オールクリア」

私が整備班から来た情報をそのまま伝える。

そして、ついに…………その時がきた。

「それじゃ、皆さんに通信を開いてください………」

『了解〜通信、開きま〜す』

………妙な明るい声。

それは聞き覚えのある声だった。

「へ? あ、あんた!!!」

ミナトさんが、オペレーター席に座っている少女を見て、絶句する。

「………お久しぶりです、白鳥 ユキナさん………」

そう、その少女は知的探究心の塊、熱血漢でありミナトさんが愛した男性の実の妹、白鳥 ユキナだった。

少し癖のある髪の毛に、大きな瞳。

確か年は18歳……だったような気がする。いや、今年で19歳、か?

まだ子供なところもあるけど、その外の部分は流石白鳥さんの妹さんって感じです。

「ちょ、ちょっとユキナ!! アンタ……なんでこんなところに居るのよ!!!」

あれ? こんな状況、どこかで見た気がしますが、まあいいでしょう。

「何でって、ナデシコのオペレーターだもの、当然でしょ?」

いつから、そんなことになったんですか? 私は内心ツッコむ。

「いつからそんな事になったのよ!!!」

あ、言われました。

「プロスさん!! これは一体………」

と、後ろの艦長席の近くに居るプロスさんに問い詰めるミナトさん。

「実際、白鳥ユキナさんは、オペレーターの育成場をを主席合格されてますよ?」

………そんなことを。

まったく知りませんでした…。

というか、結構頻繁に会っていたと思うんですが…?

「ユキナ………アンタ………」

ミナトさんもその事実を知らなかったらしく、流石にうな垂れる。

「だ、だ、だって、だって!! そんな事言ったら、ミナトさん許してくれなかったでしょ!! だから部活だって嘘ついて……」

「もう、馬鹿な子っっ!  ………勝手にしなさい…っ!!!!」

ミナトさんも、流石に折れたようです。

というか、ユキナさん、結構競争率高いオペレーター育成学校を主席合格とは。

ある意味……というか、才能ですね。

「というわけで、よろしくお願いしますね!」

『よ、よろしく……(ミナトさん以外の一同)』

…別に、私は何も言いませんけど。

 


『今日は、みなさん、ミスマルユリカです。今回、この戦艦ナデシコC艦長を仰せつかったものです、力不足な部分は多少ありますが…これから、しっかりやっていこうと思うので、お願いしますね』

艦内放送での、出発宣言……ユリカさんらしいです。

『機動戦艦ナデシコC、発進!!』

艦長の号令と共に、一気にシステムが動き始める。

「メインブースターにエネルギー変換……変換率70…80…90……100%。正常クリア」

「相転移エンジン始動…動作順調。続いて動作はBファンクションへ移行……Bファンクションクリア」

「艦内重力制御装置及び、その他もろもろの装置、異常なしのオールオッケイ♪」

ユキナさんがはしゃいで報告する。

その報告を受けたユリカさんは頷き、力強く宣言した。

『ナデシコC、これより、宇宙空間へと出ます。各員、移動防御体制Bへ移行してください』

「了解! 艦内防御体制B。繰り返します、艦内の各員は、防御体制Bへと移行してください」

『ナデシコC、リフトオフ! 相転移エンジン出力30%。目標スペースコロニー『カグラ』。座標確認』

「アイマム。座標確認。目的地まで、凡そ3時間。ルートは『サクラ』『ミナツキ』を通り『カグラ』へ………」

『機動戦艦ナデシコC、リフトオフ! とりあえず、ぱぱーっと行っちゃいましょう!』

『了解っ!』

こうして、私たちの旅が…始まった…………。

再び、ナデシコで。



 

「行っちまったな……………」

その光景を遠くで見ながら、三郎太は呟いた。

頭の上には、まるでそれを笑うかのように青い空。

僕はそれを、力いっぱいにらめつけた。

「ええ、今度は僕らが追いかける番ですね」

ハーリーも、そう、力強く頷く。

「よろしく頼むよ、マキビ=ハリ艦長?」

三郎太が馬鹿にしたように言う。

「…………………」

その言葉に、僕はぶすっとしたまま、答えなかった。
 


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