■   / 『永遠生存(番外)』 ■

 


「ふぅ……」

とある部屋に、一人の男が椅子に腰掛けていた。

男は今まで目を通していた資料から眼を離すと、ため息と共に、コーヒーを一口飲む。

そして、虚空へと眼を移し、何も無い空間を見つめながら、

「……終わり、か」

とだけ、呟いた。

男は、ん〜っと、背伸びをすると、立ち上がる。

炎が揺らめく。何故か部屋には、薄暗い電灯と、蝋燭の炎しか、光源が無かった。

そこは狭い部屋だった。

あたりにはところ狭しと書物が重ねられており、それら全てになにやら付箋がついている。

それは重要なのか、それとも忘れ去られているだけなのか、只、積み上げられている。

「……」

男は、一瞬だけ後ろを振り返る。

そこには、一つの石が置かれていた。

先ほどまではその石が光り輝いていたのだが、今、その火が消えた。

それは、終焉を意味し、失敗を意味していた。

「運命を、変えることは適わない、か」

今度は大きく嘆息。

そして、男は部屋の扉へと足を向ける。

一歩、一歩。ゆっくりと。

その姿は、まるで遊んでいるかのようで、この部屋に感慨ふけっているかのようで、何故か悲しげだった。

扉までたどり着くと、その扉を開け放つ。

と、眩しいまでの朝日が、部屋の中に入り込んでくる。

男は再び、歩く。

止まることは許されない。だから、進む。

彼に後悔は無い。あるのは、未練。

途端、彼の髪を、突風が揺する。

彼はその風の元を探るように空に眼を向けてから、一言。

「―――永遠は、長いな」

とだけ、言った。



都内の、とある屋外モニタ。

そこには厚化粧をした、明らかに30を超えたニュースキャスターが黙々と原稿を読み上げている。

格別、誰もそのTVには目を向けようともしないのに、ただ、喋っている。

『次のニュースです、都内の**区にある曽我邸が、何者かによって破壊されていた事件で、行方不明となっていた家人二人の死体が**区と**区で発見されました。警察はこの事件を、非常に悪質な同一犯の犯行と見て、捜査を継続、犯人を捜索しています。警察庁の証言によりますと、目撃者などは未だに出ておらず決死の連日連夜の捜査が今尚続いております。この事件は不審な失踪後の死亡で、警察は連続誘拐殺人事件の可能性があるとして、事件の調査を続ける方針を明らかにしました。また、この事件に関係している―――――――――――』

空からは、あの時と同じように、雪が降り始めていた。

 

 




fin

 

 

 


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